OpenAIプロンプト6戦略|ChatGPTとClaudeの使い分け

ブログのアイキャッチ画像(ChatGPT)

ChatGPTに「いい感じにまとめて」とだけ投げて、返ってきた文章を見て「……うーん、違うんだよなぁ」とつぶやいた経験のある人、正直に手を挙げてほしい。

私は毎日だ。

ある日、病院の待合室で順番を待ちながら、ふとそのことを思い出した。診察室に呼ばれて、「お腹が痛いんです」とだけ言って、医者が首をかしげる。「いつから?」「どのへんが?」「どんな痛み?」「食事は?」「便通は?」。質問が次々と返ってくる。私はうっと詰まる。

ChatGPTがやっているのは、まさにこれだったのだと気づいた。

OpenAIが公開している「Prompt engineering」ガイドラインには、AIに精度の高い回答を出させるための6つの戦略がまとめられている。これを読んだとき、内容自体は正論で、頭では理解できる。けれど読み終えて自分のプロンプトに反映できる人は少ない。なぜなら抽象的すぎるからだ。

そこで、この記事ではOpenAIの6戦略を、病院の問診票の書き方に丸ごと翻訳してみる。「症状を曖昧に書くと診断もブレる」「検査結果を持参すると話が早い」「主訴と既往歴は分けて書く」――こういう実感のある言葉で6戦略を理解できるよう構成し直した。

さらに、ChatGPTとClaudeの使い分けも整理する。私の実感では、ChatGPTは救急外来の総合内科で、Claudeは紹介状を持って行く専門医だ。どちらが優れているかではなく、症状(タスク)の性質で選ぶ。

読み終えるころには、「お腹痛い」だけで医者に行っていた過去の自分の問診票を、書き直したくなるはずだ。

目次

OpenAIの6戦略を「問診票の書き方」に翻訳する

OpenAIの公式ガイドラインに書かれている6つの戦略を、順番に問診票の書き方として読み替えていく。難しい用語は使わない。

戦略1: 明確で具体的な指示を書く

OpenAI流に言えば「Write clear instructions」。AIに伝える指示は、できるだけ具体的に書こう、という戦略だ。

問診票で言えば、「お腹が痛い」とだけ書かないで、痛みの場所・強さ・時間帯・頻度を全部書くということ。

「お腹が痛い」だけだと、医者は「胃痛なのか、腸の不調なのか、それとも別の臓器なのか」を質問で詰めていくほかない。問診票の段階で「右下腹部、押すと強く痛む、昨日夕方から、ズキズキ」と書いてあれば、医者は最初から虫垂炎を疑って動ける。

ChatGPTでも同じ。「議事録をまとめて」だけだと、AIは要約の方向性を勝手に決める。「この会議のメモから、決定事項・未決事項・次回アクションの3つに分けて、各項目を1行で箇条書きにして」と書けば、出力は一発で揃う。

具体性は、患者の責任。診断は、医者の責任。

戦略2: 参考テキストを提供する

OpenAI流に言えば「Provide reference text」。AIに資料を読ませてから答えさせる戦略。

問診票で言えば、前の病院でもらった検査結果や紹介状を、そのまま受付に渡すこと。

医者は患者の体内を透視できない。だから検査結果という「事実の塊」が手元にあるほど、推測の幅が狭まる。診察も早くなる。「他の病院で血液検査だけしてきました」と封筒を渡されたら、医者は同じ検査をやり直さずに済む。

ChatGPTに記事のリライトを頼むなら、「過去の自社記事の文体サンプル」を一緒に貼る。営業メールのトーン調整なら、「うまくいったメール3通」を貼る。AIの推測の幅を、こちらの素材で狭めてやる。

何も渡さずに「いい感じに書いて」と言うと、AIは平均的な文章を返してくる。それは誰の文体でもない。

戦略3: 複雑なタスクを分割する

OpenAI流に言えば「Split complex tasks into simpler subtasks」。一発で全部やらせず、段階を踏ませる戦略。

問診票で言えば、「主訴」「現病歴」「既往歴」「家族歴」を欄ごとに分けて書くこと。専門用語が並んだので、平たく言えば「いま一番困っていること」「症状の経過」「過去にかかった病気」「家族の病気」と分けて記入する、ということだ。

全部ごちゃ混ぜに「最近お腹が痛くて、昔は胃潰瘍やって、父も胃癌で、最近は仕事のストレスもあって」と書かれたら、医者は情報の優先順位をつけ直すところから始めなければならない。最初から欄が分かれていれば、診察は最短ルートで進む。

ChatGPTで企画書を作るときも、いきなり「企画書を書いて」と頼まない。①ターゲット定義、②課題の整理、③提案の骨子、④具体施策、と段階を分けて指示する。一段ずつ確認しながら進めれば、出力の方向性がズレたときも巻き戻しが小さく済む。

「全部やって」は、AIに対しても医者に対しても、雑な依頼。

戦略4: 思考時間を与える

OpenAI流に言えば「Give models time to think」。即答させずに、考える間を許す戦略。

問診票で言えば、「ちょっと考えてから答えて」と医者に伝えていいということ。

患者として診察室に座ると、医者の即答に安心したくなる。けれど症状が複雑な場合、即答はむしろ危ない。「少し検査結果をもう一度見直しますね」と一拍置いてくれる医者の方が、診断の精度は上がる。

ChatGPTにも、同じ余白を許してやる。「ステップバイステップで考えて」「結論を出す前に、まず根拠を3つ挙げて」と前置きするだけで、出力の質は明らかに変わる。AIは即答が得意だが、即答が常に正解とは限らない。

考える時間を与えるのは、患者からの優しさ。AIに対しても、同じ優しさが効く。

戦略5: 外部ツールを使う

OpenAI流に言えば「Use external tools」。AI単体で抱え込まず、計算機・検索・他のシステムと連携させる戦略。

問診票で言えば、「他の専門医からの紹介状」や「健康診断の数値」を一緒に持っていくこと。

医者は万能ではない。胃が専門の医者に、心臓のことを聞いても限界がある。だから心電図の結果や循環器の医者からの所見を持参すれば、判断の精度が一気に上がる。

ChatGPTにも、外部の知識を持ち込む。最新ニュースの要約を頼むなら、検索結果のテキストを貼る。コードのバグ調査なら、実行ログを貼る。AIに「自分の中だけで考えろ」と要求すると、知らないことを知ったように答えてしまう。事実の塊を渡せば、AIはそれを土台にして推論する。

紹介状は、医者の負担を減らす道具。プロンプトに貼り付ける外部情報も、同じ役割を果たす。

戦略6: 体系的にテストする

OpenAI流に言えば「Test changes systematically」。プロンプトをいじったら、複数の例で結果を比べる戦略。

問診票で言えば、同じ症状を複数の医者に聞いてみること。セカンドオピニオンの考え方だ。

一人の医者の診断だけで重要な決断をすると、見落としが怖い。だから症状が深刻なときほど、別の医者にも同じ問診票を持っていって、診断のブレを確認する。

ChatGPTでも、出力の評価は1回では足りない。同じプロンプトを複数回投げてみる。少し言い回しを変えて投げてみる。Claudeにも同じプロンプトを投げてみる。出てきた答えを並べて、「どこが共通していて、どこがブレるか」を見れば、プロンプトの精度が見える。

テストは、面倒な仕事に見える。けれど一度きちんとやれば、そのプロンプトは資産になる。

問診票の5要素マッピング

OpenAIの6戦略を「問診票の書き方」に翻訳したところで、もう一段だけ実用的な話をする。

プロンプトを構成する要素は、突き詰めると5つに分解できる。Role(役割)/Context(文脈)/Instruction(指示)/Constraint(制約)/Format(形式)。これが、問診票の各欄にきれいに対応する。

プロンプト要素問診票での対応具体例
Role担当する診療科「整形外科の専門医として」
Context患者の現病歴・体質「3日前から右膝が痛む。デスクワーク中心」
Instruction診察依頼の中身「原因の可能性と次の検査を提案して」
Constraint制約・除外条件「手術は避けたい・処方薬はNG」
Format報告書の形式「箇条書き5項目以内・専門用語は併記説明」

この5つを順番に埋めていくだけで、プロンプトの土台は完成する。

たとえば「ChatGPTに営業メールの返信案を作らせる」なら、こうなる。

あなたは法人営業の経験10年のベテラン担当者です。先方からは「価格が想定より高い」と返信が来ました。当社のサービスは品質で差別化しており、値引きは原則しない方針です。値引きを示唆せず、価値を再提案する形で返信文を作成してください。本文は300字以内、件名は20字以内、敬語は丁寧体で統一してください。

Role(営業ベテラン)/Context(先方の反応・自社方針)/Instruction(再提案)/Constraint(値引き示唆NG)/Format(字数・敬語)が、全部揃っている。

問診票も、プロンプトも、構造は同じ。空欄を埋めるか埋めないかで、出てくる答えの精度が変わる。

ChatGPTとClaudeの使い分けは「総合内科 vs 専門医」で考える

ここまで「ChatGPTの精度を上げる戦略」を中心に書いてきたが、最近の私はChatGPT一本では仕事を回していない。タスクによってClaudeに切り替えている。

両者の関係を、私はこう整理している。

ChatGPT = 救急外来の総合内科。「お腹が痛い」だけでも診てくれる便利屋。診察スピード優先で、軽症ならこれで十分。

Claude = 紹介状を持って行く専門医。問診票を細かく書くほど精度が上がる。重症・複雑ケースで真価を発揮する。

優劣ではない。症状(タスク)の性質で選ぶ話だ。

ChatGPTで済むタスク3パターン

ChatGPTは「軽症の即時対応」に強い。具体的には以下のような場面。

①日常メールの返信案
取引先への当たり障りない返信、社内の連絡メール、定型的なお礼文。文体の精度よりスピードが大事なケース。「いい感じに丁寧に書いて」で十分通用する。

②議事録・要約の下書き
会議メモの要約、長い資料の3行まとめ、ニュース記事の論点抽出。情報を圧縮する作業はChatGPTの得意分野。読みやすさのチューニングは必要だが、土台は速い。

③ブレストの壁打ち
企画のアイデア出し、ネーミング案の量産、SNS投稿の表現バリエーション。「100案出して」と頼める便利屋ポジション。出てきた案の中から自分で選ぶ前提なら、品質より量の方が役に立つ。

このあたりは、総合内科で「風邪っぽいんですけど」と相談するのと同じ。専門医に紹介状を書いてもらうほどの話ではない。

Claudeで真価を発揮する3シーン

一方、Claudeは「重症・複雑ケース」に強い。問診票を丁寧に書けば書くほど、出力の精度が伸びていく。

①長文の構造分析
1万字を超える契約書、論文、議事録の分析。Claudeはコンテキストの保持力が強く、「この章とあの章の論点が矛盾していないか」「3つの提案のうち最も合理的なのはどれか」といった構造的な比較が得意。総合内科では時間が足りない、精密検査の領域だ。

②複雑な仕様変更の影響評価
ITプロジェクトでよくある「この仕様を変えたら、他のどこに影響が出るか」の分析。前提条件・制約・関係者の利害を全部書き出して投げると、Claudeは抜け漏れの少ない影響範囲を返してくる。多疾患を抱えた患者の鑑別診断――いくつかの病気の可能性を比較しながら絞り込む作業――に近い。

③文体の細かい調整
ブログ記事の語尾だけ整える、社内文書のトーンを上から下に揃える、ペルソナ別に同じ内容を書き分ける。Claudeは語感のニュアンスを拾うのが上手い。「症状の機微を専門用語で言語化する」感覚に近いかもしれない。

このあたりは、総合内科だと診察時間が足りない。紹介状を書いてもらって、専門医にじっくり問診してもらう。

切り替え判断のコツ

どちらに投げるか迷ったら、こう自問してみる。

このタスクは、5分で答えが欲しいか?それとも30分かけても精度が欲しいか?

5分で欲しいならChatGPT。30分かけても精度が欲しいならClaude。それだけのこと。

両方契約しているなら、同じプロンプトを両方に投げて答えを並べてみるのも手だ。OpenAIの戦略6(体系的にテスト)の応用編。AIごとの個性が見えてくる。

病院の問診票がなぜ精度を上げるのか――責任分担の話

ここで一段だけ、メタな話をする。なぜ問診票が精度を上げるのか。それは、患者と医者の責任分担が明確になるからだ。

問診票に書くべきは、患者にしか分からない事実――いつから痛むか、どこが痛むか、何を食べたか。これは医者には絶対に推測できない。

問診票を読んだ医者がやるのは、医者にしか分からない判断――その症状から何の病気を疑うか、次にどんな検査が必要か。これは患者には絶対にできない。

役割が分かれているから、それぞれが自分の領分に集中できる。これが診察精度を上げる構造だ。

AIに対しても、まったく同じことが言える。

プロンプトに書くべきは、私にしか分からない事実――目的、文脈、制約、好み。AIには絶対に推測できない。

AIがやるのは、AIにしか高速にできない処理――構造化、要約、文章生成、整形。私には絶対に追いつけない速度で。

「いい感じにまとめて」だけ投げる人は、本来私が書くべき問診票を、AIに書かせようとしている。具体性は患者の責任。これを放棄すると、診断(出力)の質はどこまでも落ちる。

逆に言えば、問診票さえ丁寧に書けば、AIは想像以上の答えを返してくる。プロンプトエンジニアリングの本質は、テクニックではなく責任分担の設計にあるのだと、私は思っている。

自分の状況を相談するプロンプト例

最後に、自分の状況に合わせて「どのAIに何をどう頼むか」を相談する用のプロンプトを1つだけ置いておく。各戦略ごとにプロンプト例を作ると情報過多になるので、状況相談型を1本に絞った。

ChatGPTでもClaudeでも、どちらに投げてもいい。

あなたはプロンプトエンジニアリングの専門家です。私はこれからAIに依頼したいタスクがあります。

【タスク内容】(ここに自分のタスクを具体的に書く。例: 取引先への提案メールの返信を書きたい/長い契約書の論点を整理したい/企画書のドラフトを作りたい、など)

【私の制約】(時間/品質要求/文体/除外条件などを書く)

このタスクをChatGPTで処理すべきか、Claudeで処理すべきかをまず教えてください。次に、選んだAIに渡すプロンプト案を、Role・Context・Instruction・Constraint・Formatの5要素を埋めた形で1つ提示してください。最後に、そのプロンプトで質が出ない場合に追加すべき情報を3点挙げてください。

このプロンプトを使えば、AIに対する問診票の書き方を、AI自身に教えてもらえる。慣れないうちは、これを土台にして自分なりの型を作っていけばいい。

まとめ:問診票を丁寧に書く人が、AIに勝つ

OpenAIの6戦略を、病院の問診票の書き方に翻訳して整理してきた。最後に骨子だけ並べる。

  • 戦略1〜6は、すべて「問診票の書き方」に翻訳できる
  • プロンプトの土台はRole・Context・Instruction・Constraint・Formatの5要素
  • ChatGPT=総合内科、Claude=専門医、症状で使い分ける
  • 5分で欲しいか、30分かけても精度が欲しいかで判断する
  • AIへの依頼は、テクニックではなく責任分担の設計

問診票を雑に書く人は、医者に時間を奪われる。問診票を丁寧に書く人は、医者から最短で答えを引き出す。

AIも同じ。

おまけ:フリーランスの確定申告も「問診票」で精度が上がる

少し脱線するが、私はこの「問診票で精度が上がる」という考え方を、確定申告にも応用している。

確定申告は、税理士に相談するにしても、自分で会計ソフトと格闘するにしても、自分の収支データという問診票が揃っていなければ何も始まらない。レシートを箱に放り込んだまま3月になって慌てる人と、毎月コツコツ記録している人では、診断(申告)の精度が桁違いだ。

私が普段使っているフリーランス向けの記録ツール「LANCE」は、レシートをスマホで撮ると経費カテゴリを自動で振り分けて記録する仕組みになっている。日々の問診票が勝手に揃っていく感覚に近い。

確定申告の時期になって「お腹が痛い」状態で税務署に駆け込まないために、月単位の問診票を整える習慣をつけておくと、3月のストレスが大きく減る。気になる方は試してみてほしい。

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