銀行口座やカードの履歴を、AIが会話で読めるようになりました。
便利です。ただし、フリーランスには一つ厄介な点があります。家計と事業のお金が、同じ画面に並びやすいことです。
AIに数字を渡す前に、家計と事業の境界線を引きます。
3行でわかるサマリー
- MUFG、三菱UFJ銀行、マネーツリーは2026年5月、ChatGPTとMoneytreeの連携を始めました。
- フリーランスは、家計と事業の支出を分けてからAIへ相談すると判断しやすくなります。
- 下のプロンプトは、実名や口座番号を使わず、月次集計だけで資金の状態を点検します。
家計と事業を分ける月次整理テンプレートを無料配布中
黄色セルへ1か月分の数字を入れると、事業収支、家計収支、確保資金を反映した残高を自動計算します。AIへ貼り付ける匿名化済みの入力表と診断プロンプトも収録しています。
ChatGPTと金融口座の連携で何が変わったのか
2026年5月28日、MUFG、三菱UFJ銀行、マネーツリーは、Apps in ChatGPTを使う金融サービスを発表しました。Moneytreeにある口座残高や取引明細を、ChatGPTから普通の言葉で尋ねられる仕組みです。
たとえば「先月より支出が増えた項目は」「使っていない定期課金は」と聞く。すると、長い明細から該当する支出を探す手間が減ります。数字を眺める道具が、数字について会話する道具へ変わります。
OpenAIも米国で「Finances」を提供しています。金融口座をつなぐと、支出、請求、純資産、投資情報などをChatGPTで確認できます。2026年7月2日時点では、米国のPlusおよびProユーザー向けです。
一方、ChatGPTは金融の専門家ではありません。OpenAIも、回答は情報整理と計画のためのものであり、投資、税務、法律の判断は資格を持つ専門家へ相談するよう案内しています。
フリーランスは「家計」と「事業」を先に分ける
会社員の家計なら、給与と生活費を中心に見れば足ります。フリーランスは違います。
入金は売上なのか、立替金の精算なのか。カード払いは生活費なのか、広告費なのか。税金のために残したお金まで「使える預金」と見なすと、AIの助言以前に数字がずれます。
最低でも、次の四つに分けます。
| 区分 | 例 | AIに確認させること |
|---|---|---|
| 事業収入 | 売上、報酬、返金 | 入金の変動、未入金の有無 |
| 事業支出 | 外注費、通信費、ソフト代 | 固定費、増えた費目、見直し候補 |
| 家計 | 住居費、食費、保険 | 生活費の平均、削減余地 |
| 確保資金 | 税金、社会保険、予備費 | 使わずに残す額、不足の可能性 |
ここを混ぜたまま「今月は余裕がありますか」と聞いても、答えは安定しません。AIが間違う前に、入力が間違っています。
実データをそのまま貼り付けない
口座番号、カード番号、顧客名、請求書番号、取引先ごとの売上は入力しません。先に表計算ソフトで、1か月分の合計へまとめます。名前も「顧客A」「カードB」に置き換えます。
生成AIへ個人データを入れる前に、利用規約とプライバシーポリシーを確認します。個人情報保護委員会も、この点を注意事項として挙げています。入力データを提供者が学習に使う設定では、第三者提供に当たる可能性もあります。
公式の口座連携でも、何も考えずにつなぐのは避けます。共有する口座、学習設定、会話履歴、連携を外した後の扱い。この4点を先に確認してください。
OpenAIによると、Financesとの会話にはChatGPT全体で選んだモデル学習設定が適用されます。連携を外した金融データは30日以内に削除されます。ただし、会話履歴に残った情報は別に削除する必要があります。
家計と事業を分けるAIお金診断プロンプト
次のプロンプトは、口座へ接続しません。使うのは匿名化した月次集計だけです。投資先を決めるのではなく、お金の状態を分け、次に確認する数字を見つけます。
あなたは、フリーランスと個人事業主のお金を整理する補助者です。
投資、税務、法律の専門家として断定せず、入力された月次集計だけを使ってください。
## 目的
家計と事業のお金を分け、資金繰り、固定費、確保資金、確認不足を整理します。
## 入力時のルール
- 氏名、住所、口座番号、カード番号、顧客名、請求書番号は入力しません。
- 取引先は「顧客A」、口座は「事業口座A」のように置き換えます。
- 個別明細ではなく、1か月ごとの合計額を入力します。
- 不明な数字は推測せず「不明」と書きます。
## 入力フォーム
- 対象月:
- 月初の事業用預金:
- 事業収入:
- 事業の変動費:
- 事業の固定費:
- 事業主貸として家計へ移した額:
- 家計収入(事業主貸以外):
- 家計の固定費:
- 家計の変動費:
- 税金と社会保険のために確保した額:
- 3か月以内に予定する大きな支払い:
- 未入金の売上:
- 借入返済額:
- 分類できていない支出:
- 不安なこと:
## 判定ルール
1. 事業、家計、確保資金を混ぜずに集計します。
2. 入力にない事実は補いません。不明は「要確認」とします。
3. 収入が一時的に多い月を平常月と決めつけません。
4. 税額を計算しません。税金の個別判断は税理士への確認事項にします。
5. 金融商品の購入、売却、銘柄選びを勧めません。
6. 支出削減は金額だけでなく、事業への影響も確認します。
7. 計算式を示し、入力値から再計算できるようにします。
## 出力形式
# 100字の結論
# お金の区分
| 区分 | 入力額 | 確認結果 | 要確認 |
# 事業の資金繰り
- 事業収支
- 月末の事業用預金見込み
- 未入金を除いた場合の状態
- 3か月以内の支払いに備えた不足の可能性
# 家計の状態
- 家計収支
- 固定費と変動費の比率
- 事業主貸が生活費をまかなえているか
# 混在または分類不足
- 家計と事業が混ざっている可能性がある項目
- 分類できていない支出
- 次回から記録すべき項目
# 次の7日で確認すること
| 優先度 | 確認事項 | 確認先 | 完了条件 |
# 専門家へ確認すること
- 税理士へ確認する事項
- ファイナンシャルプランナーへ確認する事項
- 金融機関へ確認する事項
# 注意
- この出力は情報整理であり、投資助言、税務相談、法的助言ではありません。
サンプルデータで検証した結果
架空のフリーランスを想定し、次の数字を入れました。
- 対象月: 2026年6月
- 月初の事業用預金: 850,000円
- 事業収入: 620,000円
- 事業の変動費: 145,000円
- 事業の固定費: 82,000円
- 事業主貸として家計へ移した額: 230,000円
- 家計収入(事業主貸以外): 0円
- 家計の固定費: 148,000円
- 家計の変動費: 96,000円
- 税金と社会保険のために確保した額: 180,000円
- 3か月以内に予定する大きな支払い: パソコン180,000円
- 未入金の売上: 240,000円
- 借入返済額: 30,000円
- 分類できていない支出: 28,000円
- 不安なこと: 売上はあるのに預金が増えない
最初に出た事業収支は16万3,000円でした。事業収入62万円から、変動費14万5,000円、固定費8万2,000円、事業主貸23万円を引いた額です。
家計は1万4,000円の赤字でした。事業から23万円を移しても、家計支出が24万4,000円あるためです。
次に確認するのは、2万8,000円の未分類支出、24万円の未入金、18万円のパソコン購入です。税金用の18万円は、使える預金から外します。そのうえで、入金が遅れた場合の残高を見直す出力になりました。
この結果から「投資を増やすべき」とは判断できません。先に、未入金の回収時期と家計赤字を確認する必要があります。ここを飛ばさない出力になりました。
AIへ聞いてよい質問、任せない判断
明細が長くても、AIなら数字を並べ替え、差分を探せます。確認漏れを減らす用途には向いています。
聞いてよい質問
- 前月より増えた費目はどれか
- 事業の固定費はいくらか
- 家計赤字が続くと何か月で予備費が減るか
- 未分類の支出はどの証憑を確認すべきか
- 税理士へ何を質問すべきか
AIだけで決めないこと
- 株式や投資信託の売買
- 借入や繰上返済
- 経費にできるかという税務判断
- 保険の解約
- 顧客情報を含む明細の処理
便利な会話画面と、判断を任せてよい範囲は別です。最後にEnterを押すのは人間です。
参考資料
- MUFG「Apps in ChatGPTを通じた新たな金融体験の提供開始について」(2026年5月28日)
- OpenAI「MUFG、OpenAI とともに AI-Native な企業を目指す」(2026年5月28日)
- OpenAI「ChatGPT の新しい家計管理体験」(2026年5月15日、同年6月25日更新)
- OpenAI「ChatGPT の Finances」(2026年7月2日閲覧)
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2023年6月2日)
- 日本経済新聞「個人資産運用、AIで一括」(2026年7月2日付朝刊)


