ChatGPT完全ガイド②:Transformerとは

こんにちは。今日は最近大きな話題となっているChatGPTについて、その内部の仕組みを少し詳しく見ていきたいと思います。

前回はそのChatGPTの概要について解説してきました。

ChatGPTが私たちを驚かせるのは、それまでの対話システムとは比べものにならないほど正確で自然な文章を生成できることです。一体どのような技術が、こうした飛躍的な性能向上を可能にしたのでしょうか。

目次

劇的な性能向上の鍵は「Transformer」

hatGPTの基盤となっているのは、「Transformer(トランスフォーマー)」と呼ばれる画期的な技術です。Transformerが登場する以前、自然言語処理の分野では主に「再帰型ニューラルネットワーク(RNN)」という仕組みが用いられてきました。

RNNは文章を頭から少しずつ読み込んでいく方式です。例えば「私は人間である」という文を処理する際、まず「私」を処理し、次に「私の処理結果」と「は」を合わせて処理し、さらに「私の処理結果」と「はの処理結果」と「人間」を合わせて処理する、といった具合です。

しかしこの方法では、処理に時間がかかるうえ、文章中で離れた位置にある単語同士の関係を捉えにくいという問題がありました。

そこでTransformerは、RNNを使わないことにしたのです。その代わりに用いられたのが「注意機構(Attention機構)」、特に「自己注意機構(Self-Attention)」と呼ばれる仕組みでした。

離れた単語同士のつながりを見抜く「自己注意機構」

自己注意機構とは、ある単語と、文章中のそれ以外のすべての単語との関係性を図る機構のことです。この機構によって、Transformerは文章を頭から順に処理する必要がなくなり、また長い文章の中で離れた単語同士の意味的なつながりも正しく理解できるようになりました。

その結果、処理スピードが大幅に向上し、膨大な量の学習データを用いて巨大なニューラルネットワークを訓練することが可能になったのです。これが「大規模言語モデル」の誕生につながりました。

さらに、単語の意味をより正確に捉えられるようにもなりました。つまり、自己注意機構こそがTransformerの性能を飛躍的に高めた立役者だったのです。

高校数学が支える最先端技術

では、自己注意機構の中身を少し覗いてみましょう。

言語モデルでは、文章中の単語を処理するために、各単語を「単語ベクトル」と呼ばれる数学的な量に変換します。ChatGPTの基盤となっているGPT-3.5では、各単語は5万257次元もの高次元ベクトルに変換されるのです(処理の途中では1万2288次元に変換されます)。

単語ベクトルには面白い性質があります。意味が近い単語ほど、ベクトル同士の距離が近くなるのです。ベクトル間の距離を測るには「内積」という値を計算します。

自己注意機構は、ある単語ベクトルと他のすべての単語ベクトルとの内積を計算することで、単語同士の意味的な近さを測っているのです。こうして、文章中の離れた単語同士のつながりを見抜くことができるようになりました。

実はこのベクトルの内積は、高校数学(数学B)で習う範囲なのです。世界中で使われているChatGPTの中核を、高校数学が支えているというのは驚きですね。

日進月歩のAI技術

Transformerの登場によって、AIによる言語処理は大きく前進しました。しかしこの分野の発展はとどまるところを知りません。

例えば、ChatGPTではTransformerをさらに改良した「GPT(Generative Pre-trained Transformer)」と呼ばれるモデルが使われています。GPTはより効率的な学習を可能にし、より自然な文章を生成できるようになりました。

また、GPTの改良版であるGPT-2やGPT-3、そしてGPT-4へと次々と登場し、その性能は日進月歩で向上しています。

こうしたAI技術の発展は、私たちの生活やビジネスに大きな影響を与えるでしょう。例えば、カスタマーサポートの自動化、コンテンツ制作の効率化、教育の個別最適化など、さまざまな分野での応用が期待されています。

もちろん、AIには課題もあります。倫理的な問題や、偏見の助長などには十分な注意が必要です。しかし、適切に使いこなすことができれば、AIは私たちの強力なパートナーになるはずです。

Transformerに始まり、GPTへと続く技術革新の道のりを振り返ってみると、人工知能の未来はワクワクしますね。次はどんな驚きが待っているのでしょうか。私たちの想像力をかき立ててくれる、AIの更なる進化に期待したいと思います。

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