ChatGPTや他のAIツールを使いこなし、最良の回答を引き出すには、適切なプロンプト(指示文)を使うことが重要になります。
それには、ちょっとしたコツが必要です。そのコツは「プロンプトエンジニアリング」とも呼ばれています。
OpenAI(ChatGPTの会社)が公開したプロンプトのガイドラインは、そのコツを掴むための素晴らしい指針となります。ウェブサイトにひっそりと公開されていますが、瞬く間に全世界に広がりました。さすが本家本元です。
全世界のエンジニアたちが注目しているこのガイドラインを、わかりやすく解説していきます。
ガイドライン1: 指示は明確かつ詳細にする
AIとのコミュニケーションで最も重要なのは、明確かつ詳細な指示です。
AIは利用者の心を読むことができません。よってできるだけ詳細な情報を明確に与える必要があります。AIが利用者の要望を推測する手間を省けば省くほど良い結果を得る可能性が高まります。
- 悪い例:恋愛小説を書いてください。
- 良い例:10年ぶりに再会した日本人の元恋人同士のドラマチックな会話に焦点を当て、ノーベル賞作家風の文体で情感豊かな恋愛小説を書いてください。
手法1. 具体的で詳しく
上記の例となります。
手法2. 背景情報を伝える
背景情報:
急な注文にもかかわらず、ネジ工場は納期通りに納品してくれました。そのおかげで、当社は重要な注文を完了することができました。
実行内容:
ネジ工場への感謝の手紙を書いてください。手紙の全ての段落には遊び心のあるコメントを含めてください。
手法3. 区切り文字を使う
区切り文字で囲まれた文章を17文字で要約してください。
“””国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。向側の座席から娘が立って来て、島村の前のガラス窓を落した。雪の冷気が流れこんだ”””
手法4. ステップバイステップでの指示
以下のステップで実行してください。
step1:
区切り文字で区切られた文章を17文字で要約してください。
“””国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。向側の座席から娘が立って来て、島村の前のガラス窓を落した。雪の冷気が流れこんだ”””
step2:
要約した文書を英語に翻訳してださい。
手法5. 例を見せる
一貫したスタイルで回答してください。
質問:忍耐について教えてください。
回答:忍耐とは、小さな始まりから大きな成果が生まれることを意味します。例えば、最も深い谷は小さな泉から流れる川によってでき、壮大な交響曲も一音から始まります。複雑な模様も、最初は孤立した糸から始まります。
質問:海について教えてください。
回答:
手法6. 回答出力の長さを指定
10年ぶりに再会した日本人の元恋人同士のドラマチックな会話に焦点を当て、ノーベル賞作家風の文体で情感豊かな恋愛小説を1,000文字で書いてください。
ガイドライン2: 参考テキストを提供する
次に、プロンプトの力を増幅させる鍵、それは「参考テキスト」の使用です。AIには豊富な情報源へのアクセスがありますが、それを最大限に活用するには、適切な参考資料を提示することが重要です。
AIは時に自信を持って誤った回答を返すことがあります。特に難しい問題、または引用やURLの参照を求めたときに発生すると言われています。そのため、参考のテキストをプロンプトに含めることで、正確な回答を得ることができます。
- 悪い例:日本の茶道について教えてください。
- 良い例:日本の茶道に関する以下の記事を参考にして、その歴史、作法、および現代社会における意義を説明してください。
*****
[ここに、例えばウィキペディアの記事をコピペ]
この良い例では、AIに対して参考テキスト(ウィキペディアの記事)を提供し、それを基に具体的な内容(茶道の歴史、作法、現代社会での意義)を説明するよう依頼しています。
参考テキストを使うことで、AIの回答の精度と信頼性が向上します。
ガイドライン3: 複雑なタスクは単純なものに分割する
複雑な問題を解決するには、それをより小さな単純な問題に分解することが効果的です。このアプローチは、AIにとっても同様に有効です。
単純なタスクを積み重ねて、結果的に複雑なタスクを実行することで、回答の質と精度を上げることができます。
- 悪い例:村上春樹の『1Q84』の全体を要約してください。
- 良い例:村上春樹の『1Q84』を3部に分けて、それぞれの部分の要約をしてください。まず、第1部の主要なイベントと登場人物を要約し、次に第2部、最後に第3部の要約をしてください。
この例では、複雑なタスク(『1Q84』の全体要約)をより管理しやすい小さなタスク(各部の要約)に分割しています。これにより、AIは各部の内容をより正確に要約することが可能になります。
ガイドライン4: AIに考える時間を与える
AIにいきなり回答を求めようとすると、ミスが発生しやすくなります。
時間をかけて段階的に考えた上で、答えを導くように指示することで、回答の質と精度を上げることができます。
- 悪い例:日本の経済状況についての分析をしてください。
- 良い例:まず、日本の現在のGDPと主要産業についての基本的な情報を提供してください。次に、そのデータを基に日本の経済成長の傾向を分析してください。最後に、今後の経済見通しについて予測してください。
この例では、一つの大きな質問(日本の経済状況の分析)を、より小さくて扱いやすいステップ(基本情報の提供、データに基づく分析、将来の予測)に分割しています。
これにより、AIは段階的に考え、より精度の高い回答を提供できるようになります。
ガイドライン5: 外部ツールを使用する(開発者向け)
AIと外部ツールを効果的に組み合わせることで、回答結果を向上させることができます。
まず、AIに日本の現在の天気状況についての基本情報を提供してもらいます。次に、外部の気象予報APIを利用して、最新の気象データを取得し、それを基にAIに今後の天気の予測をしてもらいます。
この方法により、AIの能力と外部データの精度が合わさって、より信頼性の高い天気予報が可能になります。
ガイドライン6: テストは多角的に行う(開発者向け)
AIのパフォーマンスを評価する際には、多角的なテストが重要です。
評価と比較を行うことで、プロンプトの精度を向上させ、AIの利用効果を最大限に高めることができます。
例えば、AIを使って日本の著名な観光地に関する情報を生成する場合、異なるプロンプトや設定で複数の回答を生成し、それらを比較します。
このプロセスを通じて、どのプロンプトが最も有益かつ正確な情報を提供するかを判断できます。これにより、AIの回答品質を改善するための洞察が得られます。