フリーランスが貯金できない本当の理由——問題は「節約」じゃなくて「交通整理」だった

事業用バケツから生活費用バケツへ水が流れるイラスト

「来月こそ貯金する」

独立してから何回この台詞を言っただろう。入金があるたびに「今月はいける」と思い、月末に残高を見て「あれ?」となる。で、翌月また同じことを言う。

底の抜けたバケツに水を入れている。当時の自分を一言で表すなら、そういうことだ。

目次

3行サマリー

  • フリーランスの約4割が貯金100万円未満。「貯金できない」は意志の問題ではなく構造の問題
  • 家計簿(支出管理)をいくら頑張っても、入ってきたお金の「交通整理」ができていなければ貯まらない
  • 事業用と生活費用の口座2分割が、バケツの底の穴を塞ぐ最初の一手

フリーランスの4割が「貯金100万円未満」の現実

Workship MAGAZINEの調査によると、フリーランスの約4割が貯金100万円未満だ。さらにRelanceの調査では、フリーランスエンジニアの39.3%が「ほとんど貯金していない」と回答しており、会社員エンジニアの約2倍にのぼる。

この数字を見て「フリーランスはお金にだらしない」と思うのは簡単だ。でも違う。

会社で経理をしていた時期がある。帳簿を見て、数字を整理して、「ここの経費、事業と関係ないですね」と指摘する側の人間をやっていた。そこで気づいたことがある。お金が貯まらない人と貯まる人の差は、「使い方」じゃなくて「分け方」だった。

会社員は何もしなくても「仕分け」がされている。給与から税金と社会保険が天引きされ、手取りとして振り込まれる。振り込まれた金額=使っていいお金。シンプルだ。

フリーランスはそうじゃない。クライアントから振り込まれた金額。源泉徴収で所得税は引かれているが、住民税、国保、年金はまだ引かれていない。そしてもう1つ、見落としがちな罠がある。入金額には消費税が含まれている。

たとえば報酬50万円+消費税5万円の請求。源泉徴収で約5万円引かれて、入金は約50万円。「50万入った」と思う。でもこの50万円の中に、消費税が含まれている。仕入れにかかった消費税を差し引いた差額は、確定申告で納付しなければならない。つまり入金額の一部は、最初から自分のお金じゃない。

それを1つの口座で受け取って、同じ口座から家賃も食費もサブスクも払う。

バケツに水は入っている。でも底に穴が空いていて、どこから漏れているかわからない。これがフリーランスの「貯金できない」の正体だ。

家計簿をつけても貯金できないワケ

「じゃあ家計簿をつけよう」。ネットで「フリーランス 貯金」と検索すると、だいたいこの結論にたどり着く。

やった。つけた。マネーフォワードを入れて、支出を全部カテゴリ分けして、「今月は食費が多かったなあ」と反省した。

で、翌月も貯金できなかった。

家計簿は「出ていくお金」を見るツールだ。問題はそこじゃない。「入ってきたお金のうち、自分が使っていい金額はいくらなのか」がわかっていないことが問題なのだ。

入金50万円。源泉で所得税は引かれている。でもそこから住民税・国保・年金、さらに消費税の納付分を引いたら、いくら残るか。即答できるフリーランスは少ないと思う。即答できないまま「50万入った」の感覚で暮らしていたら、そりゃ貯金はできない。

経理的に言えば、これは「売上と利益の混同」だ。売上1億円の会社が儲かっているとは限らない。それと同じで、入金50万のフリーランスが裕福とは限らない。入金額ではなく、手残りの金額を見なければ話が始まらない。

口座を2つに分けてみた結果

バケツの底の穴を塞ぐ方法は、実はシンプルだった。口座を2つに分ける。

実際にやってみた。

口座役割ルール
①事業用売上の入金・経費の支払い・税金の積立クライアントへの請求はすべてここ
②生活費用生活費だけ毎月定額を事業用から振替。これが「手取り」

やってみて意外だったのは、「自分の手取り」が思っていたより少なかったことだ。

入金50万円。ここから事業経費(通信費、ツール代、交通費など)で5万使う。残り45万。でもこの中には消費税の納付分や、住民税・国保・年金の支払い分がまだ眠っている。それを差し引いて、生活口座に移せるのは25万がいいところ。

50万入って、使えるのは25万。半分だ。

この事実を「知っている」のと「口座の残高として目で見る」のでは、まったくインパクトが違う。人間は数字を「見る」と行動が変わる。

バケツの底を塞いだら、水が溜まり始めた。 それだけのことだった。

「交通整理」を始める3ステップ

ここまで読んで「やろう」と思った人のために、最小限のステップを書く。

ステップ1: 事業用の口座を1つ開設する

ネット銀行でいい。楽天銀行でもPayPay銀行でもいい。屋号付きの口座を作れるところが理想だが、まず個人名義でもいいから「事業専用」と決めた口座を1つ持つ。

ステップ2: 生活費用の口座を決める

すでに持っている口座でいい。ここに入った金額だけで暮らす。事業口座のカードで生活費を払わない。このルールだけ守る。

ステップ3: 毎月定額を生活口座に移す「給料日」を作る

毎月25日に事業口座から生活口座へ定額を移す。金額は自分の最低限の生活費+α。これが会社員で言う「手取り」になる。

ポイントは定額であること。今月は入金が多かったから多めに移す、をやらない。入金が多い月の余りは事業口座に残しておく。住民税、国保、消費税の納付——これらは事業口座から出ていく。入金が少ない月のバッファにもなる。フリーランスの収入は波がある。波のてっぺんに生活水準を合わせたら沈む。

この3ステップで、バケツの底の穴は塞がる。

フリーランスが貯金できない理由は、意志が弱いからでも、稼ぎが少ないからでもない。入ってきたお金が「交通整理」されないまま、1つの口座から出ていくからだ。

今日から使えるプロンプト例

自分の「本当の手取り」を計算するプロンプトです。ChatGPTでもClaudeでも使えます。

あなたは日本のフリーランス向けファイナンシャルアドバイザーです。
以下の情報をもとに、私の「本当の手取り」を計算してください。

【私の状況】
- 年間売上見込み: [例: 500万円]
- 経費の年間合計見込み: [例: 60万円]
- 扶養家族: [例: なし / 配偶者あり / 子ども1人]
- 居住地の自治体: [例: 東京都世田谷区]
- 申告方法: [例: 青色申告65万円控除]
- 加入制度: [例: 国民年金のみ / 小規模企業共済あり(月3万)]
- 簡易課税 or 本則課税: [例: 簡易課税(みなし仕入率50%)]

【出力条件】
- 所得税、住民税、国民健康保険、国民年金、消費税の概算額を算出
- 年間の「手残り額」と「月あたり手取り」を計算
- 売上に対する手取り率(%)を表示
- 生活口座に移してよい月額の目安を提案

出力例(年間売上500万円・経費60万円・青色65万控除・簡易課税の場合):

所得税: 約15.4万円
住民税: 約24.8万円
国民健康保険: 約38.5万円(自治体により変動)
国民年金: 約20.3万円(月16,980円×12)
消費税: 約25万円(簡易課税・みなし仕入率50%の場合)

税・社保合計: 約124万円
年間手残り: 500万 – 60万(経費)- 124万(税・社保・消費税)= 約316万円
月あたり手取り: 約26.3万円
手取り率: 63.2%
生活口座への月額目安: 約25万円(残りは事業口座に税金プールとして残す)

お金の「交通整理」をAIに任せる

口座を2つに分ける。これがスタート地点だ。でもその先にある「毎日の経費を正しく事業口座で管理する」が、また面倒くさい。私たちが作っているLANCEは、LINEでレシートを送るだけで仕訳を自動化するツールだ。バケツの底を塞いだあとの「水の流れの記録」を、AIが代わりにやってくれる。

LANCE — レシートを撮るだけのAI家計簿(無料)

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