生成AI「Claude」のプロンプトエンジニアリング入門③ 〜役割を与える〜

ここでは数回に渡って、生成AI「Claude」を使いこなすためのプロンプトエンジニアリングのコツを紹介しています。前回の第2回目は、「例を使う」について解説してきました。

第3回目は「役割を与える」というテクニックを中心に解説していきます。

目次

ロールプロンプティングとは?

Claudeは非常に優秀なAIアシスタントですが、時には会話の中で演じるべき役割について追加の文脈を与えることで、さらなる能力を発揮してくれます。これが「ロールプロンプティング」と呼ばれる技術です。

Claudeに特定の役割を割り当てることで、望むような反応を引き出し、精度とパフォーマンスを向上させ、状況に合ったトーンと振る舞いを実現できるんですね。ちょうど、俳優に適切な役柄を与えることで、その演技力を最大限に引き出すようなイメージでしょうか。

ロールプロンプティングの効果

ロールプロンプティングには、主に2つの効果があります。

1つ目は、精度とパフォーマンスの向上です。特に複雑な数学の問題を解いたりコードを書いたりするような場合、Claudeに適切な役割を与えることで、タスクに対する理解度が格段に上がり、優れた結果を出してくれるようになります。

2つ目は、トーンとスタイルの調整です。役割を指定することで、Claudeの話し方や態度、コミュニケーションスタイルをニーズに合わせて変化させられます。

例えば、幼稚園の先生の役割を与えた場合と、大学院の教授の役割を与えた場合とでは、Claudeの応答が大きく変わってくるはずです。

ロールプロンプティングが有効なシーン

ロールプロンプティングは常に必要なわけではありませんが、以下のようなシーンで特に威力を発揮します。

論理、数学、コーディングなどの高度に技術的なタスクを行う場合

適切な役割を与えることで、Claudeはロールプロンプトなしでは苦戦するかもしれないタスクでも優れた結果を出せるようになります。

特定のトーン、スタイル、複雑さレベルでClaudeに応答してほしい場合

ロールプロンプティングを使えば、望むアウトプットを得るのに効果的です。

Claudeのデフォルトの性能では物足りない場合

プロンプトの長さが許す限り、ロールプロンプティングを使ってClaudeの能力を最大限に引き出すことをおすすめします。

ロールプロンプティングの実践例

それでは、ロールプロンプティングの力を示すいくつかの例を見てみましょう。

まずは、以下のようなロジックパズルについて考えてみます。

「あるアヒルの前に2羽、後ろに2羽、真ん中に1羽のアヒルがいます。アヒルは全部で何羽いるでしょう?」

ロールプロンプティングなしでは、Claudeは正しい答えを出すのに苦労したり、部分的な答えしか出せなかったりするかもしれません。でも、「ロジックマスター」の役割を与えてみると…

プロンプト
役割: あなたは複雑な論理問題を解くために設計されたロジックマスターボットです。
タスク: 以下のロジックパズルを解いてください。

「あるアヒルの前に2羽、後ろに2羽、真ん中に1羽のアヒルがいます。アヒルは全部で何羽いるでしょう?」

すると、Claudeのパフォーマンスは大幅に向上し、複数の答えが可能であるニュアンスを捉えられるようになります。

出力結果

問題を注意深く読み、論理的に考えていきましょう。

「あるアヒルの前に2羽、後ろに2羽、真ん中に1羽のアヒルがいます。」

これは、基準となる1羽のアヒル(Aとします)を中心に、アヒルの位置関係を示しています。

Aの前に2羽 ⇒ アヒル1、アヒル2
Aの後ろに2羽 ⇒ アヒル4、アヒル5
Aは真ん中の1羽 ⇒ アヒル3

つまり、アヒルの並びは次のようになります。
アヒル1、アヒル2、アヒル3(A)、アヒル4、アヒル5

したがって、アヒルの総数は5羽です。

次に、聴衆に合わせて概念を説明する例を見てみましょう。

プロンプト
役割: あなたは幼稚園の先生です。
タスク: 生徒たちに「空が青い理由」を分かりやすく説明してください。

役割: あなたは大学院の物理学教授です。
タスク: 学生たちに「空が青い理由」を簡潔に説明してください。
出力結果

はい、みなさん、今日は空が青く見える理由について、先生がわかりやすく説明しますね。

空は、本当は無色透明なんです。でも、太陽の光には、赤や青など、いろんな色が含まれています。その光が空気中の小さな粒子にぶつかると、青い光が最もたくさん散乱されるんですね。だから、空は青く見えるんです。

赤い色の夕焼けになるのは、太陽が地平線に近づくと、光が空気中をより長く通るので、青い光がほとんど散乱されてしまい、赤い光が多く残るからなんですよ。

つまり、空の色は太陽の光と空気によって決まるんです。

みなさんも、今日帰る時にはきれいな青空をよく見ながら歩いてみてくださいね。空の色の変化を楽しむのも面白いと思います。

何か質問があれば、先生に聞いてくださいね。みなさんが自然の不思議に興味を持ってくれることを嬉しく思います。

出力結果

はい、皆さん、今日は「空が青く見える理由」について説明します。

空が青く見えるのは、太陽光の散乱によるものです。太陽光は様々な波長の光から成り立っていますが、大気中の分子によって散乱される度合いは波長によって異なります。

青い光は波長が短いため、他の色の光よりも強く散乱されます。これをレイリー散乱と呼びます。一方、赤や黄色の光は波長が長いため、ほとんど散乱されずに大気を通過します。

散乱された青い光が私たちの目に多く入ってくるため、空は青く見えるのです。太陽が地平線に近づくと、光が大気中を長く通過するため、青い光がより多く散乱され、赤や黄色の光が相対的に増えます。そのため、夕焼けは赤く見えるのです。

以上が、空が青く見える理由の簡単な説明です。レイリー散乱と光の波長の関係が重要なポイントですね。

このように役割を変えるだけで、Claudeの説明の仕方が大きく変わるのが分かりますね。

効果的なロールプロンプティングのコツ

最後に、効果的なロールプロンプティングのコツをお伝えしましょう。

まず大切なのは、具体的であること。Claudeに演じてほしい役割について、明確で詳細な文脈を提供しましょう。情報が多ければ多いほど、Claudeは望む役割を理解し体現できるようになります。

もう1つは、実験と反復を重ねること。使用事例に最適なアプローチを見つけるために、色々な役割やプロンプトのバリエーションを試してみるのです。プロンプトエンジニアリングには、最適な結果を得るための実験と反復が不可欠なんですね。

以上、ロールプロンプティングの基本と実践例をお伝えしました。Claudeに適切な役割を与えることで、タスクに特化した知識やスキルを発揮させ、ニーズに合った最高のパフォーマンスを引き出せること、お分かりいただけたでしょうか。

次回は「XMLタグを使う」というテクニックを紹介します。お楽しみに!

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